「母乳育児系トンデモ」をウォッチする
まずは前のエントリでもリンクした「なぜわが国では母乳育児が復活をしないのか」。
1970年代母乳育児は欧米の医療先進国においては、危うく20%台を割りかねないレベルにまでに陥りましたが、その後この危機的状況に気づいた各国政府や関係者の努力により、近年では70%から90%台への回復も報じられるようになりました。しかしわが国の現状を見れば、今日に至っても産後一ケ月時の母乳率は、依然として40%台にとどまるという悲しい現状です
う〜む、典拠が示されていないので確認のしようがない。私が以前勤務していた病院で1ヶ月時の母乳哺育(ミルクを足していない)率は50〜60%(7〜8年前)だったが、と思いつつ、ちょっと調べてみる。
まずアメリカについては、政府・医療関係者こぞっての母乳推進の動きに関するこんなレポートがあった。
アメリカにおける母乳育児への取り組み
アメリカでは1950〜1970年に(混合栄養も含めた)母乳哺育率が出生直後で30%未満、6生月で10%未満という状態でした。粉ミルク会社が販売促進のため産婦人科内で試供品を配布する習慣が浸透したこともあって、1970年代には母乳育児の比率が25%まで落ち込みました。
出生直後ですでに30%っていうのはすごいな。粉ミルク会社の販促については、日本でも母乳推進派からの攻撃の的になっているが。で、アメリカ小児科学会が推進運動を展開した結果、
1990年には出生直後の(混合栄養も含めた)母乳保育率が60%、6生月時に20%まで回復しました。
ん?そんなに多くないじゃん。そして最近のCDCのデータがこれ。
2004年に生まれた新生児に母親が母乳を与えた比率は74%と、調査を始めた1950年代以降で過去最高を記録しました。(最低だった1970年代の約3倍です。)しかし、完全に母乳だけで生後3カ月間育児する母親は全体の31%、6カ月間では11%に留まります。アメリカ小児科学会では現在も普及運動を続けています。
(筆者注:但しアメリカでは母乳育児とされている者のうち殆どが混合栄養である。)
(筆者注:日本でも1970年に完全母乳保育率は月齢4で30%と最低を記録したが、その後45%まで回復した。混合栄養と合わせると90%程度が続いている。)
・・・かなり話が違うんですけど。特に、「母乳哺育」というときに、「完全母乳」を指すのか、「混合栄養」つまり母乳をある程度は飲ませ続けているというものも含めるのか、が完全に混乱している。
ではヨーロッパはどうか?まずフランス。これはフランス在住の日本人からの悩み相談で、2004年のものだが、
(7/13追記・引用元へのリンクを示していなかったので入れました)
日本でも地方や年代によって育児のやり方が違うと思いますが、フランスではほとんど日本と反対のやり方のように思えてなりません。まずは母乳育児が盛んでなく、息子が7ヵ月を過ぎたころから家族から「まだあげてるの?」と言われるようになりました。そのころまだ夜中の授乳をしていましたが、夜中の授乳と添い寝は「悪い癖」と叱られてしまいました。離乳食はほとんどびん詰をあげるのが普通、ぐずったらおしゃぶりをあげる、寝るときもそのままベッドにボンっと置くだけ…と日本人の私から見たら、愛情がない育児にしか見えません。
http://e-mama.ocn.ne.jp/advice/mental/qa/2004/0411300200.html
こういう文化ギャップに悩み、夫の実家でのクリスマスが憂鬱、という問いである。それへの答えでは、
フランスの母乳哺育率は欧米の中でも低く、3ヵ月ごろには大半の人がミルク中心になるようです。7ヵ月を過ぎて“夜中もおっぱい”というのは、一般的に言って驚きの対象になるわけですね。また、無痛分娩(ぶんべん)や母子別寝室もあたりまえ。でも、だからといってフランスの子どもが愛情不足で問題児になりやすいかというと、そんな話は聞きません。
日本でもフランスでも、周囲の「善意の」口出しは母親へのストレスになりがちなようだ。それはともかく、どうやらフランスでは母乳哺育の率が低いらしい。
う〜ん、どうものっけから前提が怪しくなってしまったようだ。ちょっと本腰を入れて、WHOのデータベースを見てみることにした。
"The WHO Global Data Bank on Breastfeeding and Complementary Feeding"というのがある。各国で行われたリサーチの結果を検索しすることができるのだが、ざっくり何カ国か検索してみると、
フランスは、率が高いリサーチで70%(ただし持続は中央値3ヶ月)、あとはおおむね50〜60%というところ。ドイツは1970年代から80%台と高いものの、exclusive bf rateすなわち完全母乳の率は、1997〜98年のサーベイでは2ヶ月で42%、4ヶ月で33%、6ヶ月で10%にすぎない。。
イタリアは60〜90%台だが、完全母乳率は4ヶ月までで26%。イギリスは調査によってばらつきが大きく(地域差かも)50%〜80%、しかし69%というデータでも4ヶ月の完全母乳は17%である。
スウェーデンはさすがに98%前後と高く、4ヶ月の完全母乳率も60〜70%に及ぶ。ちなみに日本のデータでは、混合も含んだ母乳哺育率が示されていないが、母乳哺育の持続期間は12ヶ月と長く、4ヶ月での完全母乳率も35〜40%前後と、諸外国と比べても決して低くはない。
どうやら、「諸外国では近年母乳率が高まったが日本では低いままである」という前提自体が、「混合も含めた母乳哺育」と「完全母乳栄養」とを混同した上に成り立つ「神話」のようである。日本の母親たちは、他の多くの国の母親たちよりも長く、熱心に母乳を与え続けているのである。
そして、スウェーデンでの完全母乳率の特筆すべき高さについては、母親の意識や国を挙げてのキャンペーンといったもの以外の要因を考えに入れねばならないだろう。
・・・最初からつっこみどころ満載で長くなってしまった。この後に展開されるトンデモ、さらに他のトンデモネタについては、また別にエントリをたてることにしよう。
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No title
日本から見ると結構冷たいんだなと、あらためて思いました。
(「添い寝の習慣がない」というのは、聞いたことあったけど。)
「抱き癖がついてよくない」(いまでも信じている人いるのかな?)も、
欧米から輸入したと聞いたことあるけど、どうなのかな...?



